JR武蔵境駅から徒歩1分のメンタルクリニックです

当クリニックでは、初診患者の方がいつでもご予約できるよう、24時間365日Web予約を受け付けております。ご不明な点はメールやお電話にてお気軽にお問合せください。

WEB予約はこちら

【医師ブログ】「睡眠」について深く知ろう―(1)「浅い睡眠」「深い睡眠」「レム睡眠」とは?

【医師ブログ】「睡眠」について深く知ろう―(1)「浅い睡眠」「深い睡眠」「レム睡眠」とは?

はじめに― 人が一生で多く費やす時間、睡眠

生涯を通して、人は何に多くの時間を費やしているでしょうか?おそらく多くの人に共通しているのは、睡眠ではないでしょうか?

日頃から、睡眠の役割や重要性をしっかりと感じている人も多いと思います。このブログ記事を読んで、睡眠の役割について十分に知識を持ち、より能動的にとらえることは、心にも身体にもとても意義があることです。

ここで改めて睡眠について正しい知識をもっていただき、このブログ記事がより良い睡眠について考える機会になればと思います。

睡眠の種類―浅い睡眠・深い睡眠・レム睡眠

睡眠には、浅い睡眠、深い睡眠、レム睡眠の3つの睡眠段階があります。通常の睡眠パターンでは、覚醒状態⇒浅い睡眠⇒深い睡眠⇒レム睡眠と各睡眠段階を移行する周期を3~5回繰り返します。

深い睡眠は、脳の睡眠と言われており、睡眠の前半に現れます。

レム睡眠は、身体の睡眠と言われており、睡眠の後半に現れます。

睡眠時間は同じでも、深い睡眠が足りていないと、脳の休息が不十分で、ぐっすり眠れた感じがしません。また、睡眠時間が長すぎると、浅い睡眠やレム睡眠の時間が増えてしまい、夢を見やすい状態になり、やはりぐっすり眠れた感じがしません。

各睡眠段階がどのように移行し、どのぐらいの時間を占めているかは、客観的に終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行うことにより、脳波と筋電図※で確認することができます。 最近ではスマートウォッチなどで睡眠のパターンを管理されている方もいるかもしれません。

※筋電図検査:筋肉に細い電極針を刺した状態で、力を抜いた状態、弱い収縮、強い収縮を意識的にしてもらい筋肉より生じる電気的活動を記録します。(引用:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター

図1:健康な人の睡眠パターン

(図1:健康な人の睡眠パターン)

図1は、健康な人の睡眠パターンを示します。横軸が時間で、縦軸は睡眠の深さを表しています。

レム睡眠のレム(REM)とはRapid Eye Movementの略です。つまり、眼球が急速に動いている状態で、頭が働いていて夢を見やすい状態です。一方で全身の筋肉の緊張がゆるんでいるので、身体はリラックスして休息している状態で、金縛りなどが起きることがあります。 レム睡眠ではない睡眠段階をNon-REM(Non- Rapid Eye Movement)睡眠(ノンレム睡眠)と言い、その眠りの深さによってステージN1、N2、N3と3つに分類されます。

ステージN1は、うつらうつらするけれど、電車に乗っていれば降りる駅を乗り過ごさない程度の睡眠の深さで、覚醒から睡眠に移行した浅い睡眠です。総睡眠時間中、約5%を占めます。

ステージN2は、電車に乗っていれば首をまっすぐに保つことができず、隣の人にもたれかかる程度の深い睡眠です。総睡眠時間中約45%の割合で、もっとも多くの時間を占めます。

ステージN3は、多少の物音では目が覚めないほどの深い睡眠です。総睡眠時間中約25%を占めます。

睡眠の役割―記憶定着・疲労回復・成長・免疫

それぞれのステージにおいて睡眠の役割が異なっています。

ステージN2では、この間に記憶の定着がなされます。徹夜で勉強して試験を受けるより、勉強してから睡眠をとって挑むほうが、記憶の定着が良いことになります。寝ると忘れてしまうという心配は杞憂です。

ステージN3は、ぐっすり眠れたかどうかに関わる睡眠で、この間に様々なホルモンが分泌されます。具体例として、成長ホルモンが分泌され、子供では身体の成長(寝る子は育つ)、大人では組織の損傷の回復(筋トレ後の筋肥大)や疲労回復のために重要です。血圧、心拍数、呼吸数も減少し、身体は完全な休息モードです。

また、睡眠は免疫系にも作用します。ウイルスや細菌に感染するとサイトカインという免疫物質が分泌され、睡眠を促進することが明らかになっています。また、睡眠自体もサイトカインの分泌を促進します。風邪をひいて熱が出ると眠くなり、よく眠ると風邪の回復が早まるのはこうした理由によります。

睡眠は、生体維持(健康維持)のみではなく、非常に大切な役割を幅広く担っています。

睡眠不足のイメージ

逆に言えば、睡眠の質・量が低下すると、日中の眠気や疲労に加え、情動不安定、注意力や判断力の低下による作業効率の低下など、多岐にわたる影響を及ぼします。

睡眠の問題が慢性化すると、肥満、高血圧、2型糖尿病、心疾患、脳血管障害の発症リスクの上昇にも関与することも明らかとなっています。また、うつ病などの精神疾患においても、発症初期から睡眠の問題が出現しやすく、睡眠の問題自体が精神障害の発症リスクを高めるという報告もあります。

次回は、人にとって大切な睡眠に支障が出てしまう「不眠症」についてお伝えします。