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【医師ブログ】「睡眠」について深く知ろう―(2)「不眠症」とは?診断・治療はどのように行われるのか?

【医師ブログ】「睡眠」について深く知ろう―(2)「不眠症」とは?診断・治療はどのように行われるのか?

はじめに―不眠の悩みは3人に1人、不眠症は10人に1人とも

前回は、睡眠について、睡眠の種類や役割について詳しくお伝えしました。睡眠が人の成長や健康維持、さらに病気になったときの回復に重要な役割を果たすことを理解いただけたかと思います。まだ読んでいない方はこちらからご覧ください。

【医師ブログ】「睡眠」について深く知ろう―(1)「浅い睡眠」「深い睡眠」「レム睡眠」 とは?

今回は、その睡眠に支障が出てしまう「不眠症」について、詳しくお伝えします。現代日本では、不眠の悩みは3人に1人、不眠症は10人に1人が罹っているとも言われます。(引用:こころの情報サイト 国立精神・神経医療研究センター

それでは、不眠症とはどのような症状であり、どのような治療を行うのでしょうか?

不眠症の診断―睡眠に困っているか?生活に支障があるか?

では、この睡眠に支障が出る不眠症の診断はどのようにされているのでしょうか?睡眠障害国際分類における不眠症の診断を示します。

図2:不眠症の定義-睡眠障害国際分類第3版

(図2:不眠症の定義-睡眠障害国際分類第3版)

「睡眠に関して困っており(主観的不眠の存在、客観的な検査所見は不要)、その状態が適切な睡眠環境下で存在していること、かつ、日中の生活に支障が出ている状態が続いていること」が診断に必須となります。

不眠症は睡眠時間で診断されるものではありません。高齢になるにつれ、睡眠時間は減少するとともに、夜間に中途覚醒しやすくなります。このような加齢性の変化は40歳頃から始まりますが、睡眠時間が短くても、本人が困っておらず、日中の生活に支障がなければ不眠症ではありません。

日中の生活に支障が出るほどに眠気が強い場合、特に仕事中や重要な場面で寝てしまうなどの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、ナルコレプシーといった疾患の除外が、治療をしていく上で重要になります。

睡眠時無呼吸症候群では、いびきをかいていることが多く、気道が閉塞して呼吸が止まるため、睡眠が深くならずに、日中に過度の眠気を引き起こします。耳鼻咽喉科、睡眠専門クリニックでの検査、治療が必要になります。

むずむず脚症候群は、レストレス・レッグ症候群とも呼ばれ、安静時に足を動かしたくなり、むずむずするような不快感がでます。夕方から夜間にかけて症状が悪化しやすいため、睡眠に支障をきたす病気です。足を触ったり、叩いたり、寝返りをうつことも多くなります。パーキンソン病、糖尿病、腎機能障害、鉄欠乏性貧血などに合併することがあります。原因に応じて受診する科が異なってきます。

ナルコレプシーは、10~20代で発症することが多く、時間や場所を問わずに突然眠ってしまうなど日中の過度の眠気、喜怒哀楽などの情動の変化によって身体の力が抜けてしまう情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠中の金縛りなどが症状として表れることがあります。覚醒維持薬、抗うつ薬などを症状に応じて使います。

ステロイド、気管支拡張薬、ドパミン作動薬など身体疾患治療薬の副作用で不眠が生じることもあります。また、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症などの精神疾患の初期症状として、不眠が現れることもあります。

このように、不眠を来たす背景には様々な要因があり、不眠症の治療=睡眠薬ではありません。睡眠薬の処方のみではなく、原疾患と平行して治療をしていく必要がある場合もあります。

不眠症の治療(非薬物療法) ―睡眠薬を服用する前に大事なこと

図3:睡眠環境の調整

(図3:睡眠環境の調整)

不眠症の治療で、睡眠薬を服用する前に気を付けていただきたいことがあります。

まずは、適切な睡眠環境の調整が必要です。図3をご参照ください。良質な睡眠を確保するためには、まず適切な睡眠環境が必要になります。

その上で、生活習慣の改善や睡眠に関する正しい知識を得ていただく必要があります。それを睡眠衛生指導と言います。厚生労働省の研究班により、「睡眠障害対処12の指針」が発表されているので、その内容を説明していきます。

睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気で困らなければ十分。

睡眠時間は個人差があります。年をとるにつれ朝型化し、必要な睡眠時間は短くなります。日中の眠気で日常生活に支障が出ているかどうかが重要なポイントです。

刺激物は避け、眠る前には自分なりのリラックス法を

就寝前4時間のカフェイン摂取、就寝前1時間の喫煙を避け、ちょっとしたリラクゼーションの時間をとってから眠るようにしましょう。

眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない

眠ろうとする意気込みが頭を冴えさせ、寝つきを悪くすることがあります。 床の中=悶々とつらい時間を過ごす場所、という条件付けがされてしまうと、布団に入ること自体が不安の原因になってしまいます。眠れなければ、離床して気分転換をすることも大切です。

同じ時刻に毎日起床

昨晩はなかなか眠れず、寝付いたのが遅かったので、朝寝坊したほうがいいのではないかと考え起床時刻を遅くすると、遅い時間帯に眠るということが習慣化してしまいます。 前日の入眠時間によらず、いつも同じ時刻に起きるようにすることで、より規則正しい睡眠の習慣が確立します。日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなります。早寝早起きという言葉がありますが、早起き早寝が正解です。

光の利用で良い睡眠を

光は睡眠覚醒リズムに大きな影響を与えます。朝早くに強い光を浴びると、15時間後ぐらいにメラトニンという眠りを誘うホルモンの分泌がなされ、脈拍、体温、血圧を低下させ、深い睡眠状態になります。時差ぼけでは早く現地の時間帯に適応できます。逆に、夜遅く光を強く浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、睡眠時間も後ろにずれる傾向があります。

朝、目覚めたら日光を浴びることで、人が持っている25時間周期の睡眠覚醒リズム(体内時計)を、地球の自転にあわせた24時間周期にしています。

規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

規則正しい食事の習慣は、規則正しい生体リズムをつくります。朝食を食べることで体温も上がって、活動性も上がります。また、習慣的な適度な運動は睡眠の質を向上させます。

昼寝をするなら、15時前の20~30分

長い昼寝はかえってぼんやりしてしまいますが、15時前の20~30分の昼寝は頭をすっきりさせる効果があります。

眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに

眠りが浅いのに長く布団に入っていると、そういった時間はむしろ本人に意識されていますので、眠れないという意識が強くなってしまい熟眠感が減弱します。

睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意

睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群などは、睡眠薬を使用しない治療が必要です。

十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に

睡眠時無呼吸症候群により夜間の眠りが浅くなっている可能性や、ナルコレプシー、過眠症の症状の可能性があります。睡眠薬を使用しない治療が必要です。

睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

日本人は不眠の対処として飲酒をする人の割合が高いと言われています。アルコールは短期的には入眠をよくする作用がありますが、慣れ(耐性)が生じやすいため、同じ入眠効果を得るために必要なアルコール量が次第に増えていきます。深睡眠(ステージN3)が減少し、アルコールの利尿作用により中途覚醒も増えるため、睡眠の質が低下します。

睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

睡眠薬服用に関して、「睡眠薬がやめられなくなる」、「朝、起きられなくなる」、「日中も眠くなる」という不安・心配を持つ方が多いと思います。そのような問題が起きにくい薬剤の選択をすること、また、不眠が改善後、減量や中止ができるかどうかを途中で評価し、漫然と服用を継続しないことが重要となります。自己判断で、量を増やしたり急に中断したりしないことも重要です。専門医に相談しながら、薬剤調整をしていきましょう。

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)も有効な治療に

認知行動療法

睡眠衛生指導と並んで、認知行動療法も有効的な治療方法です。

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)は、日本ではまだ保険適応になっていませんが、米国においては標準治療に位置づけられています。

高齢者の不眠症、睡眠薬長期服用中の不眠症などに対しても有効性が指摘されており、睡眠薬の減量を促進することも示されています。不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)の内容は、次回のブログ記事で詳しく説明されています。ぜひそちらもご覧ください。